接遇マナーコラム
接遇マナーを良くしたいと望むのなら、一流の接遇/サービスと信頼されているところに出掛けることをお勧めします。「百聞は一見にしかず」のことわざ通り、素晴らしい接遇マナーとはこういうことかと一瞬にして分かります。
そしてこのコラムは理解を深めるためにご活用ください。
学生に参考書が必要なように、大人には参考体験が必要です。このページは、読む参考体験です。
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プロとしての教育を伝承するNew!
超一流は名前を覚える
身近な一流に気づこう
いい席は先着順、清潔感あふれる化粧室
たったひとりのお客様に
穏やかな心で機嫌良く
まねをしなくていい電話応答の第一声
相手が受けとりやすい名刺交換のしかた
なんのために型を学ぶのか
お客様は神様ではない
出会いの瞬間を大切に
超一流は名前を覚える
私が初めて大阪のリッツカールトンに宿泊した際の体験です。ちなみに意外にもお手頃価格の宿泊プランが存在します。
チェックイン時に受け取った朝食券に私の氏名が記載されていました。
普通、朝食券にはレストラン名と朝食の時間帯が書かれているだけで、名前がわざわざ印刷されていることはありません。
翌朝、レストランの入口で出迎えてくれたグリーターの女性に朝食券を渡すと、私の名を呼んで挨拶し、席へ案内してくれました。
その日は満室だったのか大変なにぎわいの中、楽しい気分で食事をしました。
私がレストランを出ようとしたその瞬間、後ろから「湯佐さま、本日は混み合っておりまして・・・」とグリーターが私の名前を呼ぶではありませんか。
30分も前に入店した私の名前を憶えていることに驚きました。
30分の間、どれだけ多くの人が出入りしていたことか。
なるほど、このために朝食券に氏名を記載しているのか。
大勢のお客様をさばくのではなく、ひとりひとりのお客様を正にVIPとしておもてなしする超一流の接遇マナーを体験しました。
身近な一流に気づこう
素晴らしい接遇マナーのお手本は、高級ホテルや有名店だけで体験できるものではありません。
あなたのすぐ身近にも存在しませんか?
私の住む地域にあるクリーニング屋さんの一流ぶりは、40年以上も前から変わりません。
店主夫妻は、年に一、二度利用するお客様であっても、顔を見ただけで、伝票に名前を漢字で記入します。
そう、メンバーズカードなどなく、レジに顧客データが保存されているのではなく、ふたりの頭の中に保存されているのです。
これはご主人の親御さんから伝承されています。
奥様はいつも機嫌が良く、あたたかい雰囲気で、まるで一流旅館の女将のように洗練された振舞いと話し方です。
汚れた衣類を受け取る時でさえ、手の扱いが美しいのです。
ご主人は、仕上げた品を近隣に配達もします。街中で出会ってもこちらに気がついてさわやかに挨拶をしてくださいます。
気持ちがとても明るくなります。
このクリーニング屋さんは、有名チェーン店が台頭する現在でも繁盛し続けています。
いい席は先着順、清潔感あふれる化粧室
友人から“おいしいしサービスもいい”と聞いたインドカレー屋さんでの体験です。
日曜日の昼、オープンと同時にふたりで入店。
店員さんから「どうぞお好きな席へ」と言われ、2名用のテーブルに着いたところ、
「どうぞ広い席へ」と言うので、
「いえ、これから大勢お客さんが来るでしょうから私たちはここで」と広い席は遠慮しました。
そこは化粧室の近くなので人が通るでしょうし、確かに中央の広い席の方がいいわけですが、日曜昼のかきいれ時にそれではお店の側に立てば迷惑。
運ばれてきたカレーセットには、なぜか一品多いカレーが載っていて、デザートまでついてきました。
「これは?」と店員さんの顔を見ると、「お礼です」と・・・。なんという心遣い。
最後に化粧室に入って驚きました。広く清潔感あふれるスペース。青山の有名レストランと同じ高級なTOTOトイレ。
レジでそのことを伝えると「“日本人はきれいなお手洗いが好き”と教わりました」と。
店員さんは全員外国人でした。
日本人に勝る接遇マナー。
たったひとりのお客様に
ある巨大なホテルで働いていた昔の話です。
私の担当は、最上階エグゼクティブフロアーのラウンジでした。チェックインの手続き、お茶のサービスなどお客様がゆったりと過ごせる場所です。
一階のロビーは常に大勢のお客様で溢れていて、フロントは大忙しでしたが、最上階はめったにお客様がいらっしゃいません。
「ここは静かでいいですね」と届け物をしに来たスタッフがうらやましがるのですが、ずっとそこにいる人間としては、忙しい方がうらやましいのです。
そんな時、ベテラン社員の女性がこんな言葉をかけてくれました。
私たちの仕事は、たったひとりのお客様でもこのフロアーを好んで来てくださる方を心からもてなすことなのよ。
それを聞いて、自分が何のためにここに居るのか、何のために働いているのかが明確になり、心がすっきり晴れました。
何年か後、私はディズニーブランドホテルで連日大勢のお客様をお出迎えするようになりました。
一日に何千人というお客様と接する状況でしたが、心はあの最上階での当時と同じようにおひとりおひとり、たったひとりのお客様と思い挨拶することを心がけていました。
穏やかな心で機嫌良く
季節が夏に向かい、日の出の時間が早くなりました。
私には、超早寝・超早起きがどうも体質に合っているようで、朝4時には起床し、5時過ぎに自転車に乗って、運動公園にウォーキングとラジオ体操に出掛けます。
途中のコンビニでおにぎりと飲み物を買います。
朝5時過ぎに働いている店員さんといえば、夜通し働くシフトかと思います。
そのお店の女性店員さんは、夜勤明けとはまったく感じさせない、いつもさわやかで明るい表情でレジの手続きをしてくれます。
こちらも一日のスタートに弾みがつきます。
*さりげなく聞いたところ、やはり前夜10時から翌朝6時までの勤務だそうです。
ヘアスタイルもメイクもきちんとしていて、好印象です。
私から頼まなくともおにぎりを食べるには必要だろうと気をきかせて袋にお手拭きを入れてくれ、手渡す際は私が持ちやすいように差し出してくれます。
たった300円程の買い物ですが、1万円位の付加価値を提供してくれていると私は毎回感心します。
接遇マナーでもっとも大切なことは、機嫌良く、穏やかな心でお客様に接することと改めて実感します。
自宅から運動公園への経路には、他にもコンビニが2件ありますが、やはりこのコンビニをリピートします。
まねをしなくていい電話応答の第一声
接遇マナーの所作とは、いったい誰が決めたのだろう? と、疑問に感じることはありませんか?
どんな分野にも基本があるように、接遇マナーにも無駄を省き洗練された型があります。
しかし、近頃みながやっているけれど、過剰、やらなくともいいことがあります。
ひとつ挙げると、電話応答の第一声です。
「お電話ありがとうございます」と応答していませんか?
よそがやっているからといって、まねをする必要はありません。
不要な言葉です。言うのであれば、最後に「お問い合わせありがとうございました」「ご予約ありがとうございました」のように伝えます。
「お電話ありがとうございます」に続けて、正式名称(例:株式会社○○○○)、部署名、自分の名前まで名のるところがありますが、
まずは「はい、○○○(会社名または店名)です」と簡潔に応答する方がお客様にとっては親切です。
なぜなら自分がかけようとしているところに間違いなくかかったか、すぐに分かるからです。
電話応対につきましては、接遇&ビジネスマナーの基礎にて詳しくお伝えしております。
相手が受けとりやすい名刺交換のしかた
いつの頃からか過剰に演出された名刺交換のしかたを多くの人が行っています。
「相手が受けとりやすい」「お互いがスムーズに交換できる」本来の作法をご紹介します。
この方法を知ると「これならスッキリ交換できます。今までいつもやりにくいと感じていたんです」とみなさん晴れやかな表情になります。
イラストでご覧になれます→名刺交換の作法
なんのために型を学ぶのか
接遇マナー研修では、上記の名刺交換のしかたのように型を学びます。
立ち姿勢、座り姿勢、挨拶のときにするお辞儀のしかたは基本中の基本で、ホテルで働くプロは、歩き方、お客様の話を聞く姿勢、言葉遣い、他にもさまざまな型を身につけます。
しばらくの間は基本の型を常に意識し、自分の身体に覚えさせます。
するといつしか身体能力化され、意識しなくともできるようになります。
これが習慣になるということです。
その段階までくると、心はもう自由です。
そう、型は、自分が自由になるために覚えるのです。
あとは相手と状況に応じて、省く、変える、自分なりの接遇ができます。
お客様は神様ではない
「お客様は神様です」は、国民的大スターであった三波春夫という歌手が次のような信念を表した言葉です。
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私が舞台に立つとき、敬虔な心で 神に手を合わせたときと同様に、
心を昇華しなければ真実の藝はできない と私は思っている。
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三波春夫オフィシャルサイトより引用
“雑念を払って澄みきった心で歌う”という心構えを語っています。
それをレッツゴー3匹という昭和のお笑い芸人がギャグにしただけなのに
まるで先人の教えのように「お客様は神様だから、お客様の言うことには従わなくてはいけない」と思い込んで苦しんでいる人々が多い現代、真の意味を認識し、広める必要があります。
働く人とお客様は、立場は違えど同じ人間であり、対等な関係です。
お客様に過剰にこびへつらう必要はありません。
お客様の立場になった時、働いてる人に対して上から目線でものを言ったり、横柄な態度になっては、人間として恥ずかしいことです。
出会いの瞬間を大切に
飲食店の入口でよく気づくことがあります。
それはお客様を歓迎し、挨拶することを忘れている人が多いことです。
何名様ですか? ご予約のお客様ですか? ホテルのレストランでは、ご宿泊のお客様ですか?
などと質問することから接客が始まってしまっています。
出会いの瞬間が大切なのです。
お客様の目を見て、明るくさわやかに、来店に感謝し、歓迎し、挨拶の言葉を述べます。
するとお客様は一瞬で気分が良くなり、その後が素晴らしい時間になるであろう期待感でいっぱいになります。
「おはようございます」「ようこそお越しくださいました」「ご来店ありがとうございます」
どのような言葉を述べるかはあなたのセンスで!
プロとしての教育を伝承する
昨年、日本代表チームをWBC世界一に導いた栗山英樹氏は、今年日本ハムファイターズの最高責任者に就任したそうです。
そして二軍の選手に茶髪禁止としたところ、「時代に逆行している」と批判を浴びたとか。
この「時代」という言葉には、注意が必要です。
多くの企業で「時代だから」と身だしなみ、ビジネスマナー、礼儀など大切な事柄を教えなくなっています。
実は「どう教えたらいいか分からない」のが現状で、「時代だから」は言い訳になっているようです。
職業にふさわしい身だしなみにするのは、プロとして基本です。礼儀を尽くすのは、お客様にとって気持ちの良いサービスをするためです。
無意味に口うるさくするのではありません。
お客様にサービスが良いと喜んでもらえると、働く人はモチベーションが高まり、もっと成長しようというやり甲斐、生き甲斐につながります。
人は、プロとしての教育を受けてこそ成長し、一流を目指すことに喜びを見出します。
ちなみに髪の色、スタイルは、顔の額縁ですから、印象を良くするか、悪くするかの決め手です。
自分のプロとしてのイメージを考えずに、流行りだから、有名人やみんながやっているからと安易に風変わりなスタイルを真似るのはやめておくことをお勧めします。